アナログレコードができるまで!






 アナログレコードはデジタル音源(CDなど)と違って、レコード盤に物理的に音溝を刻みます。そのためには多くの工程が必要となります。以下にレコードの製作工程を見ていきましょう!

■カッティング工程 <写真 01~09 参照>
 マスター音源をカッティングマシンでラッカー盤に溝として刻み込む工程です。
 ラッカー盤の製作現場であるスタジオは音源の再生機材やモニタースピーカーが埋め込まれ、持ち込まれた音源のチェックやレベルの調整を行う部屋である。
 近年はCDで持ち込まれることが多いそうである。DATやアナログテープは稀で年に数回程度ということであったが、当日はラッキーなことに香港の音楽会社から届いた、テレサ・テンのマスターテープからカッティングの実演をしていただいた。
 オープンリールのマスターテープがテープデッキにかけられ、回転する様子は本当に久しぶりの光景である。
 まして、プロの使用する機材でありレコーディング用の特殊なものである。スイッチを入れるとモニタースピーカーから柔らかな温かみのあるテレサ・テンの歌が聞こえてきた。
 さすがにマスターテープの音は素晴らしいものであった。
 続いて、カッティングマシンの説明であるが、一般的にオリジナルテープはマルチチャンネル(マルチトラックとも呼ばれ、16トラックや24トラックまたはそれ以上のものもある)で録音されているので、2チャンネル(2トラック)のステレオテープに作り変えなければならない。
 ミックスダウンとかトラックダウンと呼ばれるものである。
 ここで各チャンネルの音質補正をしたり、ステレオの定位をきめたり、ダイナミックレンジが広すぎ、そのままではカッティングすることができない音にはリミッターをかけ、デッドなスタジオで採られた音には必要なだけのエコーをつけ加えるなど、いろいろな加工をしてマスターテープが作られる。
 このテープをコピーして、カッティングに必要な基準信号やテープレコーダーのヘッドの傾きを調整するための信号などを付け加えたものが、カッティング・マスターテープとなる。
 カッティング・マスターテープの音はそのままカッティングすることはなく、RIAAに変換後カッティングする。
 カッティングマシンはすでに製造している会社はないのでメンテナンス等は全て東洋化成で行っているそうである。
 SX-84は特殊な用途に使用するので、一般のレコード製作には SX-74が使われている。1ミリメートルに何本の溝を刻むか設定をし、カッティングマシンの針(カッター)をラッカー盤の上に移動し切込みを入れていく。 僅かだが録音中の音が聞こえている。
 ラッカー盤は30cmLPより一回り大きく(14inch)、黒色の盤である。ラッカー盤も通常レコードのように再生可能であり、 カッティングマシンにもプレーヤーが装備されている。材質が柔らかいため、普通は再生はしないそうである。
 数分間切り込みを入れたところで、顕微鏡で溝を覗き込んでみる。無音部分と録音されている溝は明らかに形状が違って見える。顕微鏡で溝を見るときはカッティング後に 溝と溝の間を確認するためであり、近すぎると針飛びの原因となってしまう。

<補足>
(1)ラッカー盤(14inch)
・カッティングマシンにより最初に作成される原盤。12inch(30cmLP)のラッカー盤は14inchのものを使用する。
・ラッカー盤は鮮明で最も音が良いが材質が軟らかいため、一回聴くと溝が減ってしまう。
(2)カッティング3条件
・音源2系統-音によってピッチを変える(バリアブル・ピッチ・コントローラ)。同時に視聴も行える。
・RIAAカーブ-カッティングは高音を強く低音を弱くする。再生にはフォノ・イコライザーを使用する。
・カッティングヘッドは振動が激しいので発熱し周波数が変わってしまうのでヘリウムガスで冷却する。
(3)カッティングマシン
・ノイマン社製のSX-74(国内に3台)とSX-84を所有している。
・カッティングは外周と内周では異なる。内側は音が歪んでしまう。
(4)レコード番号などの刻印
・内周部にレコード番号、カッティングエンジニアの名前を入れる。刻印のものや手書きのものがある。

■原盤工程 <写真 10~17 参照>
 カッティングされたラッカー盤(凹)はメッキ工程に引き継がれ、マスター盤(凸)、マザー盤(凹)、スタンパー(凸)の順に作成される。
 マザー盤も普通のレコードと同じようにレコードプレーヤーで再生可能であるが、音はやや硬い。なお、マスター盤とスタンパーは凸なので再生は不可である。
 メッキ後のマスター盤からマザー盤を剥し、マザー盤の完成となる。意外と原始的で機械は使わず手作業で剥すので、結構、大胆な作業である。
 出来上がったマザー盤は試聴室で再生され、音質や傷(ルーペが必需品です)などが念入りにチェックされてから、スタンパーの作成となる。

<補足>
(1)メッキ(電気メッキ)
・ラッカー盤に電気メッキ(銀盤ラッカー/500オングストローム)をする。
(2)マスター盤
・ラッカー盤の溝に銀皮膜処理を施した後、両面それぞれ電鋳メッキという方法で型起こしされたニッケルメッキの盤がマスター盤と呼ばれる。 型の溝の部分は凸になっているので聴くことは出来ない。
・このマスター盤は1枚のラッカー盤から1枚しか作成できない。失敗するとカッティングから再度、作り直す。
(3)マザー盤
・マスター盤に同様の作業を施してニッケルメッキの盤を剥離したものがマザー盤と呼ばれる。溝は凹になるので再生が可能であり音の確認をするために使用する。 固い音がする。
・このマザー盤は1枚のマスター盤から3~4枚作成できる。
(4)スタンパー
・試聴検査をクリアしたマザー盤から大量にプレスするためのスタンパー盤と呼ばれる盤を起こす。溝は再び凸になりプレス作業での耐久性を考慮しニッケルメッキの上に クロムメッキ加工をする。
・通常1枚のスタンパーから2000枚のレコードがプレスできる。さらにプレスが必要な時は再度マザー盤から作り直す。
・マスター盤~スタンパー迄はメッキ処理により型起こしするので、ゴールドディスクのように輝いている。ただ思ったほど厚くなくぺらぺらな盤である。


■プレス工程 <写真 18~22 参照>
 スタンパーが出来上がると次はプレス工程に引き継がれる。通常スタンパーから4000枚程度のレコードが作成可能であるが、東洋化成では品質を維持するために2000枚程度のレコードをプレスしている。
 通常のレコードは自動プレス機でプレスされるがピクチャーレコードについては手作業によるプレスである。ピクチャーレコードは塩化ビニールの円形シートに2枚の写真(以前は両面だったが、現在は片面づつの印刷となっている)が 印刷された台紙を挟み込んでプレスする。
 盤に歪みが出ないようにどうしても硬くする必要があり混ぜ物をしている。その関係で音質はどうしても悪くなってしまうようである。 現在はアーティストの販促用品としてプレスされることが多く、LPサイズだと部屋のインテリアに向いているようで若い人に人気がある。
 自動プレス機では実際にプレスされているところも見学できました。プレス機の中に材料とレーベルが取り込まれ、プレスされてレコードが次々と出てくる様子は感動的である。

<補足>
(1)東洋化成社ではコンプレッション圧縮機を使用している。LP用のプレス機が5台、EP用のプレス機が2台導入されている。 それぞれ、LPでは30秒で1枚、EPでは20秒で1枚のプレスが出来る。
(2)レコードは塩化ビニールを原料としているが、実際は透明な材質である。塩化ビニールだけでは粘りが少ない。レコードは粘りを多くした方が良いのでカーボンを混ぜている。 カーボンが黒いためにレコードは黒くなってしまう。
(3)通常盤は125g~130g、重量盤では180g・200gの材料が必要になる。現在はソノシートは製造中止となっている。また、ピクチャー盤なども製造しているが、写真がレコード溝により見づらくなる。

■パッケージング・出荷 <写真 23 参照>
 プレスされたレコードは品質チェック(傷や雑音など)をされて、ビニールの内袋に入れられ、一枚一枚丁寧にパッキングされ出荷される。
~ 東洋化成の皆さん、ありがとうございました! ~

※なお、株式会社ソニーDADCジャパンでもアナログレコードの一貫生産が可能となりました。
※2018年3月21日より、アナログレコード自社生産復活第1弾として「大瀧詠一」と「ビリー・ジョエル」のレコードが発売されました。

アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

01:カッティング・スタジオ






アナログレコードができるまで
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02:操作パネル






アナログレコードができるまで
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03:オープンデッキと手塚氏






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04:RIAAに変換する装置






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05:カッティング・マシン






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06:カッティング(1)






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07:カッティング(2)






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08:カッター






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09:ラッカー盤






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10:メッキ装置(1)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

11:メッキ装置(2)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

12:マスター盤






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

13:マザー盤を剥す(1)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

14:マザー盤を剥す(2)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

15:マザー盤を剥す(3)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

16:マザー盤の試聴室






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

17:マザー盤の試聴






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

18:ピクチャー盤のプレス(1)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

19:ピクチャー盤のプレス(2)






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~東洋化成株式会社 工場見学記~

20:自動プレス機(1)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

21:自動プレス機(2)






アナログレコードができるまで
~東洋化成株式会社 工場見学記~

22:レコードの材料






アナログレコードができるまで
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23:レコードの品質チェック






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~東洋化成株式会社 工場見学記~
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